英単語が覚えられないなら「音のフック」——似た音の言葉に意味を絵で結ぶ
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英単語が覚えられないなら「音のフック」——似た音の言葉に意味を絵で結ぶ

英単語を何度書いても、次の日には消えている。その覚え方に足りないのは「フック」かもしれません。音の似た母語の言葉を見つけ、意味と一枚の絵で結ぶ。50年前の実験とその後の検証をふまえ、今日から試せる手順にまとめました。

「英単語を何度書いても、次の日には消えている。」

単語帳を赤シートで隠して、覚えたはずの単語。テストの空欄を前にすると、意味だけがすっぽり抜けています。

書く回数を増やしても、手応えは変わりません。

足りないのは根気ではありません。記憶に引っかける「フック」かもしれません。

音の似た言葉を「フック」にする

外国語の単語を、音の似た母語の言葉に引っかけて覚える。この方法を試した実験があります。

アトキンソンとラウが1975年に報告した「キーワード法」です。

ロシア語の単語を覚える課題で、単語ごとに「音の似た言葉(キーワード)」を手がかりとして与えました。

すると、ただ暗記した人より覚えられる単語が増え、数週間後に思い出せた数も多い傾向でした。

ここで大事なのは、これが特定の課題での結果だという点です。すべての言葉に効くと言い切れるものではありません。それでも、覚え方の入り口を変えると差が出る、という手がかりになります。

フックのかけ方は「音」と「絵」の二段

やり方は二段です。まず、覚えたい単語と音の似た母語の言葉を1つ探す。次に、その言葉と単語の意味を、一枚の絵にして結ぶ。

下の図が、その二本の橋です。

キーワード法の流れを3つの箱で示した図。左の箱は覚えたい単語「pond(池)」。①音の橋として「似た音を探す」矢印でつながり、中央の箱は音のフック「ポンッ」。②絵の橋として「一枚の絵にする」矢印でつながり、右の箱は意味の絵「石が池にポンッ」。音でたどり着ける言葉に、意味を絵でくくりつける流れを表している
図1: 音で近づき、絵で意味に結ぶ二本の橋(当サイト作成)

たとえば英語の pond(池)。音の似た「ポンッ」をフックにします。

石が「ポンッ」と池に飛び込む絵を思い浮かべる。これで音と意味が、一本の線でつながります。

フックになる言葉は、意味と関係なくてかまいません。bland(味気ない)なら「ブランド」。高級ブランドを着た人が、味のしない料理を食べている絵を作る。

ばかばかしいほど、記憶に残ります。

覚えた「つもり」で終わらせない

ただし、落とし穴があります。

トーマスとワンが1996年に調べたところ、キーワード法の効果は、覚えた直後は強く出るのに、時間がたつと薄れてしまう場合がありました。

同じ研究に、手当ても書かれています。フックと意味を、はっきりした「絵」にして覚えた人は、あとまで思い出せる割合が上がりました。

効きが速いぶん、根が張る前に「もう覚えた」と感じやすい。この手応えを鵜呑みにしないこと。

ぼんやり頭の中で結ぶだけでは弱い。絵をくっきり描き、その日のうちに一度、自分で思い出す。

そこまでやって、フックは根を張ります。

効く単語と、効きにくい単語

この方法が得意なのは、絵にしやすい単語です。pond、apple、bridge のように、姿が浮かぶ言葉。

苦手なのは、justice(正義)や trend(傾向)のような、絵にしづらい抽象語です。無理に絵にすると、かえって手間がかかります。こうした言葉は、意味を自分の言葉で言い換えて書くだけでも、絵に描くのと同じくらい残ったという実験があります(描いて覚える方法)。

だから、全部の単語でやろうとしないこと。

見た回数が足りないだけなら、まず普通に何度か見る。それでも音と意味が結びつかない単語にだけ、フックをかける。それで十分です。

今日から試す「音のフック」

やり方はかんたんです。上手な絵はいりません。頭の中に浮かべるだけです。

  1. なかなか覚えられない単語を1つ選ぶ(10秒)
  2. その単語と音の似た母語の言葉を1つ探す(30秒)
  3. その言葉と、単語の意味を、一枚の絵にして思い浮かべる(30秒)
  4. その日の夜、歯みがきの前に、単語帳を見ずに絵ごと思い出す

コツは、絵をばかばかしくすることです。ありえない、動きのある絵ほど残ります。

資格試験の専門用語や、仕事で覚える横文字にも同じ手が使えます。読みが近い言葉を1つ、フックに借りるだけです。

ほかの覚え方と組み合わせる

音のフックで買えるのは、記憶に「入れる」速さです。「忘れにくさ」までは、この一手では買えません。

入れたあとに効くのが、思い出す練習と間隔をあけた復習。作った絵を、時間をあけて自分で思い出す。フックが抜けやすい弱点を、ここで補えます。

絵で結ぶという発想は、言葉と図をセットで覚えるとも重なります。ちがいは、こちらが「音」を入り口にする点です。

順番のある物事を覚えたいなら、場所に置いていく場所法のほうが向きます。フックは、単語を1つずつ結ぶのが得意です。

学び方の引き出しは、学びの柱でも増やしています。

まずは今日、いちばん覚えられない単語を1つ。音の似た言葉を見つけて、ばかばかしい絵を1枚、頭の中に描いてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. なかなか覚えられない単語を1つ選ぶ
  2. その単語と音の似た母語の言葉を1つ探す
  3. その言葉と意味を、一枚のばかばかしい絵にして思い浮かべる
  4. その日の夜、歯みがきの前に、単語帳を見ずに絵ごと思い出す

出典・参考

  1. Atkinson, R. C., & Raugh, M. R. (1975). An Application of the Mnemonic Keyword Method to the Acquisition of a Russian Vocabulary. Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory, 104(2), 126–133.eric.ed.gov
  2. Thomas, M. H., & Wang, A. Y. (1996). Learning by the Keyword Mnemonic: Looking for Long-Term Benefits. Journal of Experimental Psychology: Applied, 2(4), 330–342.stars.library.ucf.edu

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。